AIで暗黙知を形式知化し活用する方法|熟練者のノウハウを継承するには
熟練者が長年の経験の中で培ってきたノウハウは、多くの場合言語化しづらい暗黙知として個人に蓄積されています。
これを組織全体で共有できる形式知へ変換することは、業務効率の向上やイノベーション創出のために欠かせません。
本記事では、暗黙知とは何か、その問題点、暗黙知を形式知化するための具体的な手法を解説するとともに、AIが暗黙知の共有にどのように貢献できるのかをご紹介します。
このような方におすすめの記事です
- 社内の暗黙知を可視化し、ナレッジ共有を促進したい方
- 熟練者の知識や経験を組織全体で活用したい方
- AIを活用した業務効率化やDX推進に興味がある方
- 形式知化による属人化リスクの軽減を検討している方
- ナレッジマネジメントツールやAI導入を検討している方
目次[非表示]
暗黙知とは何か
暗黙知の意味と定義
「暗黙知」は、個人の身体的感覚や直感、経験によって蓄積される、言葉や文章だけでは伝えにくい知識やスキルを指します。
多くの場合、職場でのOJTなどを通して熟練技術者から後輩へと少しずつ伝えられるものの、体系的なドキュメントやマニュアルとして残りにくいという側面があります。
組織が長期的に成長を続けるには、こうした暗黙知の存在を見極め、適切な方法で共有を推進することが不可欠です。
例えば、熟練工が何年もかけて体得した手先の感覚や、ベテラン営業マンの顧客との信頼関係構築のコツなどが典型的な例です。
形式知との違い
一方、「形式知」は、文字やデータ、図表などを通じて、誰もが同じ情報を参照できる知識を指します。
もともと個人が持っていたスキルやノウハウを、文章・数式・図表などに落とし込み、可視化したナレッジのことです。
例えば、マニュアルや研修資料、標準仕様書などが代表的ですが、こうしたドキュメント化された知識だけでは、熟練者の持つ包括的なノウハウを完全に再現することは難しいという課題もあります。
暗黙知は個人や集団に依存しやすく、共有が難しいため、いかに暗黙知を形式知化し、活用できる形にするかが重要なポイントとなります。
暗黙知の特徴
- 経験や感覚に基づく知識で、言語化が難しい
- 個人や集団内に限定され、共有しにくい
- 直感的な判断や職人技などが該当
- OJTや実践を通じて伝承される
- 可視化や文書化に時間と労力がかかる
形式知の特徴
- 文字や図表で明確に記録され、共有しやすい
- マニュアル・研修資料・標準仕様書などが該当
- 組織全体で活用可能な知識
- AIやナレッジ管理ツールで検索・活用できる
- 可視化されているため、業務の標準化がしやすい
暗黙知の問題点
個人依存による属人化
暗黙知が特定の個人にのみ内在している状態が長く続くと、意思決定や業務リーダーシップがその人物に集中します。
結果的に組織は、特定の担当者の稼働状況に依存する体制になり、万が一のときに業務が滞ってしまう可能性が高まります。
個人にノウハウを集約させるのではなく、システムや文書化、あるいは後述するAIツールなどを使いながら拡散共有する姿勢が重要です。
経験やノウハウの継承が難しい
熟練者の感覚や直感による判断基準は、単に数値化したり文章化しただけでは正しく伝わらない場合が多くあります。
たとえば製造現場における音や振動、あるいは営業現場における顧客との雑談時の空気感などが暗黙知として存在するからです。
こうした要素を次世代に引き継ぐには、表面的な引き継ぎ手順だけでは不足し、より徹底したヒアリングや観察・記録が必要になります。
組織全体での知識活用が困難
暗黙知が属人的な状態のままでは、別の部署や新しいチームメンバーが活用できる形に落とし込まれていません。
結果として、企業や組織全体の知識資産を十分に引き出すことができず、現場レベルでの意思決定やトラブルシューティングに時間がかかるケースが増えます。
知識が個人に埋もれてしまうと、他者がそれを活用する機会や場が限られてしまう点が大きなデメリットです。
業務の再現性が低い
熟練者不在の状態で同じクオリティのアウトプットを期待しても、言語化されていない知識が抜け落ちていると再現は困難です。
結果として、業務品質が不安定になり、顧客満足度の低下やビジネスリスクの増大へとつながるリスクがあります。
組織として継承すべき標準手順と、熟練者の暗黙知をどう結びつけるかが大きな課題となります。
暗黙知と形式知がうまく共有されない要因
暗黙知を形式知に変換し、組織で共有することが難しい背景には、技術的・組織的な課題があります。
暗黙知は言語化が難しい
本人が無意識に使っている知識が多く、どこから言語化すればいいのか不明確です。
また、日々の業務が忙しく、社員が知識を整理し共有する時間やリソースを確保することが難しい場合もあります。
組織文化がノウハウ共有を阻害する
ノウハウを個人が独占しやすく、共有するインセンティブが生まれにくい環境では、知識の伝達が進みにくくなります。
特に、技能伝承の意識が低いと、熟練者の経験が次世代に引き継がれにくいという課題が発生します。
既存のツールでは対応しきれない
マニュアルやFAQだけでは、経験的・直感的な知識をカバーできません。
そのため、情報システムでは処理しきれない領域が残り、知識の実現可能性が低くなるケースもあります。
こうした課題を解決するためには、AIを活用したナレッジ管理が有効です。検索型AIチャットボットや自動議事録作成ツールを活用することで、暗黙知を形式知化しやすくなります。
暗黙知を形式知化する必要性とメリット
業務の向上と効率化
暗黙知を共有して体系化することで、業務フロー全体を見直すきっかけにもなります。
熟練者が長年培ってきた工夫を取り入れた業務マニュアルを整備することで、全員が一定以上の生産性やクオリティを発揮しやすくなるのです。
属人化のリスク回避
暗黙知を形式知化することで、技術やノウハウが特定の人物に依存しにくくなります。
人事異動・退職などによって組織が不安定になるリスクを回避し、継続的な事業運営を支える重要な基盤となります。
イノベーションの促進
暗黙知を広く共有すると、新しい観点での知識の組み合わせが可能になり、行動につながる具体的なアイデアが生まれやすくなります。
熟練者が気づかなかった面でも、形式知化した情報を他の専門家が活用することで、組織的なイノベーションを創出できます。
社内コミュニケーションの改善
暗黙知を形式知化して誰もが参照しやすい形に整備すると、関係者間の会話や意思決定が円滑に進みます。
共通の基礎知識があることで、部署や職位を越えた連携がスムーズになり、組織全体の士気向上にもつながります。
共有可能な知識(ナレッジ)に変える手法
AIによる形式知化
AIを活用することで、インタビューや会話の内容を自動で要約・分類し、その中から熟練者特有の判断基準やノウハウを抽出できるようになります。
さらに、近年の統計的な自然言語処理技術の進化と生成AIの発展により、暗黙知の形式知化がこれまで以上に高度かつスピーディに実現可能となりました。
具体的な導入事例としては、熟練工の音声や映像をAIが分析し、システムがガイドラインや勘所集を自動生成する手法があります。
これにより、人手では見落としがちな細かな違いや重要な要素を的確に捉え、より精度の高い知識共有が可能になります。
ナレッジマネジメントツールの活用
ナレッジマネジメントを推進する上では、単に情報を保管するだけでなく、必要なときに即座にアクセスできる設計が重要です。
ドキュメント管理システムやナレッジ共有ツールを活用して、ユーザーが検索しやすいタグ付けや分類を行い、適切な権限管理を組み合わせることで運用効率が高まります。
SECIモデルの実践
暗黙知と形式知の変換には、SECI(セキ)モデルが提唱されています。
従業員の知識や技能のなかから「暗黙知」を組織的に管理し、必要に応じて「形式知化」するための理論です。
SECIモデルは、共同化(Socialization)・表出化(Externalization)・結合化(Combination)・内面化(Internalization)の4つのプロセスを繰り返し行い、新たな知識や技術を生み出します。
「場」のデザインとナレッジリーダーシップ
場所とコミュニケーション形態を意図的に設計することで、暗黙知を可視化しやすい環境を作ることができます。
ワークショップやブレーンストーミング、現場実習などの手法を組み合わせ、知識共有を推進するリーダーが発言を促すことで、より深い知識が引き出されるのです。
暗黙知の活用を支援するAIツールの種類
AIを利用して暗黙知を共有・活用するためには、さまざまなツールを組み合わせることが効果的です。
AI技術は多岐にわたり、暗黙知を形式知化する上で補完的な役割を担ってくれます。企業の規模や業種、具体的な課題に応じて導入すべきツールを選定し、それぞれの特性を活かしながら相乗効果を狙うのがおすすめです。
AIチャットボット・FAQシステム
顧客や社内ユーザーが自然言語で質問すると、過去のドキュメントやQ&Aデータベースに基づいて回答を提示する仕組みです。
チャットボットを活用することで、熟練者が逐一対応しなくても暗黙知の一部を形式知化した情報として提供できます。特にFAQシステムと連動することで、問い合わせ対応の負担を大幅に軽減できます。
例えばAIを活用した次世代型のチャットボット「amie」なら、過去の会話やナレッジデータを分析し、最適な回答を提供します。ユーザーの意図を正確に理解し、パーソナライズされた対応が可能です。
AIドキュメント管理・ナレッジ共有ツール
大量の文書やマニュアルが点在していても、AIによる文書解析や自動タグ付けを活用すれば、必要な情報に素早くアクセスできる環境を整えられます。
また、蓄積された知識の関連性を可視化できるツールを導入すれば、組織内に埋もれている有用なノウハウを効果的に発掘することも可能です。
例えばナレッジ共有を促進する社内Wikiツール「NotePM」は、全文検索やバージョン管理、アクセス制限機能を備えており、情報の蓄積と検索が容易です。
AI音声・会議録画・議事録作成ツール
会議や現場での打ち合わせを録音・録画し、AIが自動的に文字起こしを行うことで、議論内容や熟練者のアドバイスを形式知化しやすくなります。
音声や映像から感情やトーンを分析する技術も進化しており、通常のテキスト資料ではキャッチできないニュアンスを把握できる点が魅力です。
AIによるデータ分析・ナレッジ抽出ツール
センサーからの情報や大規模な業務ログをAIで解析し、熟練者のパターン認識を数値化する手法が注目を集めています。
異常検知などの分野では、熟練工の経験則をAIが学習し、トラブルの早期発見に活用する事例も増えています。
大規模データを活用すれば、これまで眠っていた暗黙知の断片を自動的に抽出し、新たな知見につなげられる可能性が広がります。
暗黙知の課題を解決する「amie」の特長とは?
AIチャットボットのひとつである amie (アミー) は、組織内に散在する熟練者のノウハウを抽出して分類し、業務プロセスにスムーズに組み込むことを可能にするAI活用型のソリューションです。
シナリオ作成やFAQ準備不要で、社内ドキュメントから迅速に学習し、SNSやビジネスツールと連携しながら効率的に情報提供が可能です。
- かんたん2ステップ設定
- シナリオ・FAQ作成不要
- 直感的に欲しい情報を確認
- ビジネスツールやSNSと連携
- AIが学習しタグを自動生成
シナリオ・FAQ作成不要
通常のチャットボットでは回答シナリオの設計や大量のFAQデータ入力が必要ですが、amie (アミー)は社内ドキュメントを学習データとして使用可能です。
ノーコードで操作がしやすく、複数ファイルの同時学習もできるため、情報が更新された際の再学習も負担になりません。
また、クラウドストレージにも連携可能なため、膨大なデータも安心です。
かんたん2ステップ設定
amie (アミー) は、インストールと初期設定のステップがシンプルに設計されています。
一番手間の掛かる初期導入時のシナリオ作成や学習データの整形が不要です。最短約3分で学習が完了し、すぐにチャットボットを稼働させることができます。
amieは暗黙知の課題をこう解決する
amie (アミー)を導入すれば、属人化のリスクを大幅に低減し、熟練者が持つ独自のやり方や判断基準を安全に組織全体で共有できます。
既に社内にある資料や手順書、議事録、メモ、社内サイトの情報、参考サイトのURLなどをamieに覚えさせるだけで、簡単に情報共有が可能になります。
必要な知識をすぐに検索・活用できるため、ナレッジの属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上にもつながります。
▶ 「amie」なら、30日間の無料トライアルを実施中! 実際の業務で試しながら、AIヘルプデスクの効果をぜひ体感してください。
暗黙知の課題解決ならABKSSにご相談ください
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AI導入にはコストや運用負担など多くの課題がありますが、ABKSSなら最適なツールの選定から導入後の運用支援まで一貫してサポート可能です。
暗黙知の課題解決を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
おわりに
暗黙知の形式知化は、組織の知識を活用し、競争力を高めるために不可欠です。
特に、熟練者のノウハウを共有・発展させることは、企業文化の活性化や人材育成にも大きな価値をもたらします。また、知識を流動的に保つことで、新たなアイデアが生まれやすくなり、変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応できます。
こうした知識共有の課題を解決する手段として、AIは暗黙知の言語化・可視化を大幅にサポートします。
しかし、AIの活用だけでなく、知識を共有し活用する文化を育てることが重要です。 情報を整理し、学び合う機会を増やしながら、効果的なナレッジ活用を進めていきましょう。