3Dプリンタ用フィラメント代表的な11種類・選び方を分かりやすく解説

FDM(熱溶融積層)方式などの3Dプリンタで造形を行う際に使用されるフィラメントですが、その種類や特性は多岐にわたるため、選択に迷う方も多いのではないでしょうか。3Dプリンタ本体の性能やノズル温度に適合するかなど、確認すべき項目が多くあります。
本記事では、代表的なフィラメントの種類から選定ポイント、保管方法などを分かりやすくまとめています。
このような方におすすめの記事です
- 3Dプリンタの導入を検討している方
- 3Dプリンタを始めたばかりの方
- 3Dプリンタ用フィラメントの選び方を知りたい方
目次[非表示]
- ・3Dプリンタ用フィラメントとは?
- ・代表的なフィラメント素材11種
- ・PLA(ポリ乳酸)
- ・ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
- ・PET・PETG
- ・PC(ポリカーボネート)
- ・ナイロン(PA)
- ・ASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)
- ・TPU(熱可塑性ポリウレタン)
- ・SMP(形状記憶ポリマー)
- ・PP(ポリプロピレン)
- ・PPGW(ガラス繊維強化ポリプロピレン)
- ・カーボンファイバー配合(炭素繊維強化フィラメント)
- ・各フィラメントの特徴比較
- ・フィラメントの選び方
- ・フィラメントの保管とメンテナンスのポイント
- ・よくある疑問やトラブルの対処法
- ・3Dプリンタ用フィラメントに関するご相談はABKSSへ
- ・おわりに
3Dプリンタ用フィラメントとは?

3Dプリンタ用フィラメントとは、FDM(熱溶融積層)方式などで造形を行う際に主に使用される熱可塑性の材料を指します。
直径1.75mmや2.85mmの糸状に加工された素材が一般的で、プリンタがノズルを通して加熱・押し出すことで造形物を形成します。多彩な素材やカラーが存在し、用途に応じて選ぶことができます。
フィラメントを選ぶ際には、造形時の温度や仕上がり、強度などがポイントになります。例えば、高温に強い素材を選ぶと耐熱性が高い部品が作れますが、プリント時に反りやすいなどの注意点も出てきます。素材ごとの特徴をしっかりと把握するようにしましょう。
フィラメントの基本構造と役割
フィラメントは熱可塑性樹脂を中心とした材料で、プリンタ内部のヒートブロックで溶融し、ノズル先端から押し出されることで造形が進みます。
機械部品や工業製品など実用度の高いものから、フィギュアや芸術作品といったクリエイティブな造形物まで、用途に合わせて種類を選択できます。
複数の素材が混合された複合フィラメントなども存在し、金属や炭素繊維、木材などの性質を持たせることもできます。
また、加熱温度や流動性の違いによってフィラメントの扱い方や押し出し量の調整が必要になるため、プリンタ設定との相性や使用環境は重要な要素です。
なぜ素材の種類が重要なのか
素材の種類によって、造形物の強度・耐久性・仕上がりなどが大きく異なります。
例えば、高い耐熱性や耐衝撃性を求めるなら「ABS」や「PC」、生分解性や初心者の扱いやすさを重視するなら「PLA」というように、用途と素材特性を考慮する必要があります。
さらに、ゴムのような柔軟性が必要な用途では「TPU(熱可塑性ポリウレタン)」のような弾性フィラメントが候補になります。スマホケースや衝撃吸収パーツなど、曲げやすさ・しなりを活かした造形に向いています。
種類によってプリント時の難易度も変わる
さらに注意すべきなのがフィラメントの種類によってプリント時の難易度も変わるということです。「ABSは歪みやすくケミカル臭が発生しやすい」「一方でPLAは反りづらく扱いやすい」といった具合に、それぞれ素材特性がありますので、造形前のチェックが不可欠です。
また、こうした素材選びの段階で適したベッド温度やノズル温度の確認、セッティングも忘れずに行いましょう。
代表的なフィラメント素材11種
PLA(ポリ乳酸)
「PLA」は植物由来の生分解性プラスチックで、低い温度で造形でき初心者に適したフィラメントです。造形中の反りや収縮が少なく安定した出力が可能ですが、高温では歪みやすく、耐熱性・耐衝撃性は高くありません。
メリット
- 初心者でも造形しやすく失敗が少ない
- 反りや収縮が少なく精度が安定
デメリット
- 高温で軟化しやすく耐熱・耐衝撃性が低い
- 屋外や高強度を必要とする用途には不向き
向いている場面
- 試作モデルやフィギュアなどホビー用途
- 3Dプリントの入門学習
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
「ABS樹脂」は石油由来のプラスチックで、自動車部品にも使われるほど強度と耐熱性に優れています。実用的な部品の造形に適しますが、プリント時に刺激臭や有害ガスが出やすく、反りやひび割れが生じやすいため十分な対策が必要です。
メリット
- 強度・耐熱性に優れ、実用性が高い
- 仕上がりが頑丈で後加工もしやすい
デメリット
- 造形時に刺激臭や有害ガスが発生する
- 反り・割れが生じやすく造形難易度が高い
向いている場面
- 強度・耐熱性が必要な実用パーツの造形
- 機械製品の試作や筐体プリント
PET・PETG
「PET」はペットボトルに使われる樹脂ですが、FDMでは結晶化や反りの影響で扱いづらい場合があります。
市販フィラメントの主流は改良版の「PETG(グリコール変性PET)」で、透明性と強度のバランスが良く、臭いが少ないのが特長です。吸湿の影響を受けにくく造形が安定し、ABSほど耐熱性はないものの、食品容器の試作やクリア部品に向きます。
メリット
- 透明性が高く仕上がりが美しい
- 吸湿しづらく安定した造形が可能
デメリット
- ABSほどの耐熱性がなく高温用途には不向き
- 印刷条件(ノズル温度・速度)の調整がややシビア
向いている場面
- クリアパーツやボトルなど透明な試作品
- 食品容器や装飾品のプリント
PC(ポリカーボネート)
「PC」は衝撃強度と耐熱性が非常に高いフィラメントで、工業製品や機械部品向けによく利用されます。しかし、造形には高いノズル温度と厳密な温度管理が必要で、収縮による反りも大きいため初心者には扱いが難しい素材です。
メリット
- 衝撃や高温に対する耐性が非常に高い
- 工業用途の部品にも使われる頑丈さがある
デメリット
- 造形には高温のノズルやヒートベッドが必要
- 収縮が大きくエンクロージャー(囲い)が推奨される
向いている場面
- 強度・耐熱性が求められる機械部品
- 高負荷環境で使う試作品
ナイロン(PA)
「ナイロン」は高い耐摩耗性と柔軟性を併せ持つフィラメントで、ギアや自動車部品など摩耗が激しいパーツに適しています。ただし吸湿性が非常に高く、造形や保管時には徹底した湿気対策が必要で、造形難易度も高い素材です。
メリット
- 高い耐摩耗性を持ち、摩耗する部品に最適
- 適度な柔軟性があり衝撃で折れにくい
デメリット
- 吸湿性が非常に高く保管に注意が必要
- 反りや収縮が大きく造形が難しい
向いている場面
- 歯車やベアリングなど摩耗の激しい機構部品
- ある程度の柔軟性が求められる可動部品
ASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)
「ASA」はABSに近い性質を持ちつつ、耐紫外線性や耐候性(雨風への耐久性)が向上したフィラメントです。強度や耐熱性はABS並みに高く、屋外で使用する部品でも劣化しにくいですが、造形難易度や反りやすさはABSと同程度で注意が必要です。
メリット
- 紫外線や天候に強く屋外使用でも長持ちする
- 高い強度・耐熱性を備え実用性が高い
デメリット
- 造形時の反りや収縮がABS同様に発生する
- プリント難易度が高くエンクロージャー推奨
向いている場面
- 屋外看板など日光にさらされる部品
- ホビー用ドローンフレームなど野外利用するパーツ
TPU(熱可塑性ポリウレタン)
「TPU」はゴムのような弾性を持ち、耐摩耗性・耐衝撃性にも優れるエラストマー系フィラメントです。衝撃吸収や滑り止め、保護用途など、しなりを活かす部品に向いています。
ただし、TPUはすべての3Dプリンタで安定して造形できるわけではなく、柔らかいほど搬送が難しくトラブルが起きやすい素材です。多くのプリンタでは、目安としてShore A 90以上のTPUが扱いやすいとされています。
メリット
柔軟性が高く、衝撃吸収・耐摩耗に強い
しなりを活かした機能部品を作りやすい
デメリット
プリンタ構造や設定の相性が出やすく、造形難易度が上がる
柔らかいグレードほど送りが不安定になりやすい(硬度選びが重要)
向いている場面
スマホケース、保護カバー、衝撃吸収パーツ
滑り止め、パッキン、柔軟なジョイント部品
SMP(形状記憶ポリマー)
「SMP」は一定温度で形状が変化し、再加熱で元の形に戻る特性を持つ特殊なフィラメントです。一般的な3Dプリント用途ではほとんど使われませんが、その機能性から医療分野など特殊用途で注目されています。扱うには素材特性の深い理解と精密な温度設定が必要です。
メリット
温度による形状変化・復元という独自機能を持つ
応用範囲が広く将来的な活用も期待できる
デメリット
一般には普及しておらず入手や造形が困難
素材特性の理解と精密な温度管理が必要
向いている場面
- 医療デバイスなど特殊分野のプロトタイプ
- 形状記憶機能を活かしたギミック部品の作製
PP(ポリプロピレン)
「PP」は軽量で耐薬品性に優れ、日用品から医療用品まで幅広く使われるプラスチックです。引っ張り強度と柔軟性を併せ持ち、繰り返しの曲げにもある程度耐えられますが、造形時にベッドへの接着が難しく、反りや剥がれが生じやすいという課題があります。
メリット
- 軽量で耐薬品性が高く安全性が高い
- 引っ張り強度と柔軟性を併せ持ち、曲げに強い
デメリット
- 造形時のベッド接着が難しく反りやすい
- 安定造形には専用接着剤や高度な設定が必要
向いている場面
- 繰り返し曲げるヒンジ構造の部品
- 食品容器や実験器具の試作
PPGW(ガラス繊維強化ポリプロピレン)
「PPGW」はPPにガラス繊維を混合した高剛性フィラメントで、耐摩耗性も通常のPPより向上しています。過酷な環境での使用に耐える優れた特性を持ちますが、造形難易度が非常に高く、ノズル摩耗を防ぐため硬度の高いノズルの使用や精密な温度管理が必要です。
メリット
- ガラス繊維配合により剛性・耐摩耗性が非常に高い
- 高温多湿や機械的負荷の大きい環境下でも性能を発揮する
デメリット
- 造形難易度が極めて高く上級者向けの素材
- ノズルへの摩耗負荷が大きく硬質ノズルが必要
向いている場面
- 高強度・高耐久が求められる産業用の試作部品
- 通常のPPでは強度不足となる特殊用途のパーツ
カーボンファイバー配合(炭素繊維強化フィラメント)
「カーボンファイバー配合」フィラメントは、ベース樹脂(PLA、PETG、ナイロンなど)に炭素繊維を混ぜて、剛性(たわみにくさ)や寸法安定性を高めた強化フィラメントです。軽量でしっかりした造形物が得られやすく、治具・固定具・フレームなど、形状をカチッと保ちたい用途で選ばれます。
メリット
- 高剛性でたわみにくく、軽量な部品を作りやすい
- 収縮や反りが抑えられやすく、形状が安定しやすい
デメリット
- ノズル摩耗が起きやすく、耐摩耗ノズルが推奨される
- 素材によっては層間の強度が出にくく、衝撃には弱い場合がある
向いている場面
- 治具、固定具、ブラケットなど剛性重視の部品
- 形状保持が重要な試作パーツやフレーム類
各フィラメントの特徴比較
以下に、代表的な3Dプリンタ用フィラメント素材の比較表を示します。素材ごとの特徴をしっかりと把握するようにしましょう。
素材 | 造形しやすさ | 強度・耐熱性 | 屋外/耐候性 |
|---|---|---|---|
PLA | ◎ | △ | △ |
ABS | △ | ○ | △ |
PETG(PET・PETG) | ○ | ○ | ○ |
PC | △ | ◎ | ○ |
ナイロン | △ | ◎ | ○ |
ASA | △ | ○ | ◎ |
TPU | △ | ○ | ○ |
SMP | △ | △ | △ |
PP | △ | ○ | ○ |
PPGW | △ | ◎ | ○ |
カーボンファイバー配合 | △ | ◎ | ○ |
フィラメントの選び方

3Dプリンタに対応したフィラメントを選ぶ
3Dプリンタには対応フィラメントの温度帯や推奨素材が明記されていることが多いため、取扱説明書や公式サイトでノズル・ベッドの推奨温度を確認しておきましょう。
互換性のない素材を使うと造形不良やノズル詰まりの原因になります。事前にスペックを把握しておけば、設定もスムーズです。
また、ノズル径や素材による摩耗も考慮が必要です。耐熱素材や強化素材をよく使う場合は、定期的な交換や耐摩耗ノズルへの変更も検討すると安心です。
強度・耐熱性・価格などを比較する
使用環境を想定すると必要な物性が見えてきます。高負荷部品ならナイロンやPC、屋外用途ならASAなど、目的から候補を絞り込みましょう。
価格帯も素材で差があるため、予算と性能のバランスを取ることが大切です。PLAやABSは比較的安価で、特殊素材ほど高価になる傾向があります。
迷う場合は専門家に聞いてみるのも手です。ABKSSの3Dプリンタ支援サービスでは、用途や予算、造形目的を整理したうえで最適な選択肢をご案内いたします。
フィラメントの色や質感で選ぶ
色や質感は完成品の印象を左右します。半透明のPETGで透過表現を狙ったり、艶消し・パステル系PLAで見た目を整えたりと、用途に合わせて選べます。
触感や光沢が特徴の素材もあり、展示用やギフト用途では特に重要です。
ただし、顔料量や配合によって物性が変わることがあります。見た目だけでなく、造形精度や強度も合わせて評価しましょう。
フィラメントの保管とメンテナンスのポイント

湿度を避けて保管する
フィラメントは乾燥剤とともに密閉容器で保管するのが基本です。その中に湿度計を入れ、状態をこまめにチェックできると尚良いです。
フィラメントドライボックスを使えば、保管しながらプリントできるタイプもあり手間を減らせます。湿度が高い環境では短時間でも吸湿しやすいため、空調の効いた部屋や除湿できる場所で保管するのが理想です。
長期保管による劣化に注意する
長期保管では素材によって経時変化が起こりやすいので、光や熱の影響を受けやすいものは箱に入れて暗所で保管し、定期的に変色やヒビ割れを確認しましょう。
使いかけのスプールは、フィラメントが緩まないよう固定しておくと扱いやすくなります。
よくある疑問やトラブルの対処法

フィラメントは純正品以外も使えるのか?
多くの3Dプリンタは、独自のロック機構がない限り純正以外も使用できます。
ただし保証は純正品に限られる場合もあるので注意しましょう。
また、最適温度や推奨速度も機種で異なるため、初回は小さなテスト造形で確認するのがおすすめです。
プリント中のニオイが気になる場合は?
ABSやナイロンは加熱時にニオイが出やすいため、換気が不十分だと不快に感じることがあります。エンクロージャーや排気ファン、屋外へ排出するダクトなどで対策すると効果的です。
低臭タイプのABSや環境配慮型PLAもあるので、気になる場合は素材を見直すのも方法です。
フィラメントがプラットフォームに貼り付かない場合は?
ベッドに定着しない場合は、まず初層設定を見直します。ノズル高さを調整し、押しつぶし量が適正か確認しましょう。
プリントシートや接着剤(スティックのり等)、スプレーを使う方法も有効です。印刷前にアルコールで汚れや油分を拭き取って清潔に保つことも重要です。
3Dプリンタ用フィラメントに関するご相談はABKSSへ

ABKSSの3Dプリンタ支援サービスでは、導入前のヒアリングから方式・機種選定、現場で安定して活用するための運用設計までを一貫してサポートしています。
用途や予算、造形目的を整理したうえで最適な構成を提案し、設置・初期設定、造形条件の調整、社内向けの教育・トレーニングまで対応可能です。
また、自社でのモデリングが難しいケースや、高い精度が求められる部品、複雑形状のデータ作成についてもお気軽にご相談ください。
なおフィラメントは、市販品を選ぶだけでなく、プラスチック廃材を原料にフィラメント化するといった活用方法もあります(実現可否は素材特性や設備条件によって異なります)。
当社へご相談いただければ、用途に合った素材選定の整理に加えて、必要に応じて3Dプリントに向いた材料の改質も含めてご提案できます。まずは「作りたいもの」と「求める特性(強度・耐熱・柔軟性など)」をお聞かせください。
おわりに
3Dプリンタ用フィラメントは種類が豊富で、PLAやABS、PETGをはじめ、専門的な素材までさまざまです。
素材ごとに求められるノズル温度やベッド温度、保管環境が異なるため、適切なメンテナンスと使い方を知ることが重要です。湿気対策などをしっかり行えば、造形物の品質を格段に向上できます。
自分に合ったフィラメントを見つけて使いこなすことができれば、創造の幅が大きく広がります。ぜひ本記事を参考に、目的に合った素材と適切な方法で3Dプリンタを楽しんでください。
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