Fusionを使う意味を部品加工の現場から考える| ものづくり白書に見る製造業の課題

部品加工の現場では、日々多くの判断が積み重ねられながら仕事が進んでいます。その判断は、経験や感覚に支えられた大切な技術です。
一方で、人手不足や世代交代が進む中、「その判断をどう引き継ぐか」は多くの現場で共通の課題となっています。
本記事では、従来の加工フローを整理しながら、Fusionを使うことで現場の考え方や判断を途切れさせずに共有していくためのヒントを、いまの加工現場の視点から考えていきます。
この記事はこんな方におすすめです
現場の属人化に課題を感じている方
技能継承をどう進めるか悩んでいる方
図面と加工意図の共有に困っている方
Fusion導入の意味を現場目線で知りたい方
目次[非表示]
部品加工現場の現状

部品加工の現場では、図面を読み取り、段取りを考え、加工中も判断を重ねながら仕事を進めていきます。その判断は、長年の経験や感覚の積み重ねによるもので、「なぜそうしたのか」を一言で説明するのは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし近年、人手不足や世代交代が進み、「できる人が支えてきた現場」から「引き継ぎが必要な現場」へと状況は確実に変化しています。
中小企業白書2023やものづくり白書2025においても、人手不足や技能人材の確保・継承の難しさが継続的な課題として示されています。
●出典 中小企業庁『2023年版 中小企業白書』第1部 第1章 中小企業・小規模事業者の動向
●出典 経済産業省『2025年版 ものづくり白書』第1部 第2章 製造業を取り巻く環境と人材
一般的な部品加工の流れ

1.図面を確認する
多くの加工現場では、まず支給されたPDF図面(2D)を確認するところから作業が始まります。寸法や公差、指示事項を読み取り、加工に必要な情報を頭の中で整理しながら、全体像を把握していきます。
この段階での読み取り精度が、その後の段取りや品質に大きく影響します。
2.必要な形状だけをCADで作成
次に、図面の中から加工に必要な部分だけをCADで作成します。
最終形状すべてを3D化するのではなく、「今回削るところ」「確認したいところ」に絞ってモデリングするのが一般的です。これにより作業時間を抑えやすく、短納期案件にも対応しやすくなります。
3.CAMで工程を組みNCデータを作成
作成したCADデータをCAMに取り込み、加工工程や工具、切削条件を設定します。
ここでは、加工順序や工具選定など、現場で培われた判断が色濃く反映されます。最終的にNCデータを出力し、実機での加工へと進みます。この一連の流れはスピード感があり、現場力を活かしやすい方法と言えます。
このやり方の良いところ
この加工フローは、必要な部分だけをCADで作成するため、加工準備に時間をかけすぎず、短納期の案件にも対応しやすい点が特長です。
また、加工工程の組み立てや工具選定には、現場で培われた経験や判断がそのまま活かされ、現場の工夫や感覚を活かしながらスピード感を持って進められる方法として、多くの加工現場で使われてきました。
次のセクションでは、このやり方で生じやすい課題について整理していきます。
一般的な部品加工で生じやすい課題

加工意図がデータに残りにくい
この加工フローでは、「なぜこの順番なのか」「なぜこの工具を選んだのか」といった判断の理由が、データとして残りにくい傾向があります。
結果だけは残っても、その背景が共有されないため、後から見た人には意図が伝わりません。
引き継ぎが口頭中心になりがち
加工の考え方や注意点は、担当者から担当者へ口頭で伝えられることが多くなります。そのため、引き継ぎには時間がかかり、聞き手の理解度によって伝わり方に差が出やすくなります。
結果として、同じ説明を何度も行う負担が生じます。
人によって品質が左右される
判断の前提条件が共有されていない場合、担当者が変わることで加工品質にばらつきが出ることもあります。ものづくり白書2025では、熟練者の判断やノウハウに依存した工程では、技能の共有や若手育成に時間と負担がかかることが示されています。
●出典:経済産業省『2025年版 ものづくり白書』第1部 第2章 第3節「ものづくり企業におけるDXの取組状況と人材活用」
Fusion CAMとは

Fusion CAMは、Autodesk Fusionに搭載されているCAM機能です。CADで作成した3Dモデルと同じ環境で加工工程を作成できるため、データの受け渡しや変換作業が不要です。
形状を確認しながら加工順序や工具、切削条件を設定できるため、「どの形状を、どの順番で、どう削るか」という判断を、モデルと一緒に管理できます。
設計と加工を分断せず、現場の判断をデータとして残しやすい点が、Fusion CAMの大きな特長です。
Fusion CAMで作る「加工用3Dモデル」

Fusion CAMでは、最終形状そのものではなく、加工時の状態を表した「加工用3Dモデル」を作成します。PDF図面をもとに、基準面や仕上げ代、加工順序といった要素を反映した3Dモデルを作り、そのモデルをCAMに流して加工工程を作成します。
加工用3Dモデルがあることで、仕上げ代から「どこを最後に仕上げるのか」、基準面や原点から段取りの考え方、加工順序や工具選定の意図まで、判断の理由を形として残すことができます。
ものづくり白書2025では、デジタル技術を活用して設計・製造情報を共有することで、現場での認識差を抑え、技能の見える化や人材育成につなげる重要性が示されています。
●出典:経済産業省『2025年版 ものづくり白書』第1部 第2章 第3節「ものづくり企業におけるDXの取組状況と人材活用」
常に全員が最新版で使える環境

Fusion CAMはクラウド型のため、バージョン差が生まれません。
「どのPCが最新か分からない」「昔のデータが開けない」「アップデートに時間がかかる」といった、現場でよくある悩みが自然と減っていきます。全員が同じ環境で作業でき、データ形式の違いによるトラブルも削減できます。
ものづくり白書2025では、製造現場におけるツールやシステムの分断が業務の非効率や手戻りの要因となることが指摘されており、データや仕組みを共通化することで、こうしたロスの削減につながることが示されています。
●出典:経済産業省『2025年版 ものづくり白書』第4章 第2節「製造業の競争力強化に向けたDX」
データはクラウドで一元管理
Fusion CAMでは、データはPCではなくクラウド上のデータパネルに保存されます。
事務所・現場・出先を問わず同じデータにアクセスでき、USBやNASに比べてセキュリティ面のリスクも抑えられます。
ものづくり白書2025では、製造現場や部門間でデータを共有し、デジタル技術を活用している企業ほど、生産性の向上や付加価値創出につながっていることが示されています。
●出典:経済産業省『2025年版 ものづくり白書』第4章 第2節「製造業の競争力強化に向けたDX」
Fusionの導入ならABKSSにご相談ください

また、Fusion CAMの実践スキルを身につけたい企業向けに、少人数制で学べる「Fusion CAM機能集合講習」を本社セミナールームで定期開催しています。加工設定、ツールパス作成、NCデータ生成まで実務に沿って習得でき、若手育成やDX推進にも最適です。
おわりに
加工現場の判断や工夫は、本来とても価値のある技術です。
Fusion CAMは、その判断を置き換えるための道具ではなく、考え方や意図を無理なく残し、共有するための仕組みだと私たちは考えています。
人が変わっても、現場の知見を伝承できる状態をつくること。それが、これからのものづくりを支える一歩になるはずです。








