CAD/CAMとは?設計工程編|人気おすすめソフト8選|基本から加工プロセスまで
CAD/CAMはCAD図面から工作機械へのプログラムを橋渡しする不可欠なツールです。使用されるソフトウェアは多種多様で、導入後に効果的に活用するためには、自社のニーズに合ったソフトウェアを選択することが必要です。
それぞれの特長を理解し、自社の要求に合致するものを選べば、製造の効率が大きく向上することでしょう。
そこで本記事では、CAMの基礎知識をはじめ、主要CAMソフトウェア、NC工作機、NC装置、CAD/CAM加工軸などについて幅広く解説します。
このような方におすすめの記事です
- CAMについて基礎知識を付けたい
- 使用中のCAMの入れ替えを検討している
- CAMの導入を検討している
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目次[非表示]
- ・「CAD」とは
- ・「CAM」とは
- ・「CAD/CAM」とは
- ・CAD/CAMの主な機能
- ・CAD/CAMを導入する際のメリットとデメリット
- ・CAD/CAMの加工フローについて
- ・CAD/CAMソフトウェア8選
- ・CAMCORE EX
- ・Autodesk Fusion(Fusion360)
- ・VISI
- ・Mastercam(マスターキャム)
- ・hyperMILL(ハイパーミル)
- ・SheetPartner(シートパートナー)
- ・FFCAM(エフエフキャム)
- ・CAMTOOL(キャムツール)
- ・CAD/CAMの導入フローについて
- ・CAD/CAM加工軸について
- ・NCデータとは
- ・CAD/CAMの導入ならABKSSにご相談ください
- ・おわりに
「CAD」とは
CAD(キャド)は「Computer Aided Design」の略で、コンピュータを活用した設計支援ツールを指します。この技術を使うことで、設計や製図をコンピュータ上で効率よく行うことができます。
CADには、2D CADと3D CADの2種類があります。2D CADは平面図の作成に適しており、3D CADは立体的なモデリングが可能で、曲面や複雑な形状も視覚化できる点が特徴です。従来の手書き製図と比べて、データ化された図面は管理や修正が容易で、他のプロジェクトへの転用もスムーズに行えます。
また、CADには多用途に使える「汎用CAD」と、建築・配管・電気設計、さらには服飾デザインなど、特定の業界や用途に特化した「専用CAD」が存在し、製造業から建築業、デザイン業界に至るまで、幅広い分野で利用されています。
「CAM」とは
CAM(キャム)は「Computer Aided Manufacturing」の略で、製造作業のサポートや自動化を目的としたコンピュータ技術やソフトウェアを指します。
具体的には、CADで設計されたデータを元に、工作機械の制御に必要なNC(数値制御)プログラムを作成します。このプロセスにより、製品や部品の製造・加工を効率化できます。多くの場合、CADで作成した設計データがCAMへと引き継がれ、加工が進められます。
「CAD/CAM」とは
現在主流となっている「CAD/CAM」 は、CADとCAMの両方の機能を併せ持つシステムのことを指します。設計からNCデータの作成までをすべて同じシステム内で実行でき、設計から加工までの流れを一貫してサポートします。この統合により、工作機械との互換性が向上し、高精度な製造が可能になります。
また、設計変更や複雑な形状の加工にも柔軟に対応可能で、製造業や建築業など幅広い分野で活用されています。
CAD/CAMの主な機能
ツールパスの生成
CAMシステムは、CADで作成されたモデルデータをもとに、「使用する工具」「工具の動作パターン」「加工速度」といった条件を設定し、最適な加工経路を表す「ツールパス」を自動生成します。このツールパスにより、無駄な動きを最小限に抑え、加工時間の効率化が実現します。
ツールパスには荒加工や仕上げ加工、ドリル加工といった工程ごとの選択肢があり、それに応じた加工プログラムの作成が可能です。この加工経路データは「CLデータ(カッターロケーションデータ)」と呼ばれ、各CAMソフト独自のフォーマットで出力されます。
CLデータを工作機械が認識できる形式(Gコードなど)に変換するためには、「ポストプロセッサ」と呼ばれる機能が使用されます。
この機能により、CLデータが工作機械用の「NCデータ」に変換され、加工に活用されます。
シミュレーション機能
CAMソフトには、加工工程を仮想的に再現するシミュレーション機能が搭載されています。この機能を使うことで、加工前に工具の動作や材料の削り方を可視化し、干渉やエラーを未然に防ぐことができます。
データ管理とCAD連携
CADとCAMの連携により、設計データを加工データへ効率よく変換できるのもCAMの特徴です。この連携機能により、設計変更や新しい要求にも迅速に対応可能となり、製造工程全体の効率を向上させることができます。
CAD/CAMを導入する際のメリットとデメリット
導入メリット
- 部品の加工方法やツールの動きを最適化できる。
- CADソフトウェアと連携し、設計データを直接読み込み加工プログラムを生成できる。
- 手動よりも高精度かつ効率的な生産を実現できる。
- 複雑な形状や高度な加工技術を要する部品も簡単に製造できる。
- 加工データの修正が簡単にできる。
導入する際のデメリット(注意すべきこと)
- ソフトウェアやハードウェアの購入など、初期費用が高額になることが多い。
- 操作には専門知識が必要で、習得に時間と費用がかかる。
- 異なるシステム間でデータ互換性の問題が発生しやすい。
- ソフトウェアは高度な機能が多く、操作が複雑で手間がかかる。
- メンテナンスとサポートなど、定期的な保守費用が必要。
CAD/CAMの加工フローについて
CADCAMの加工フローは、設計から製造までの一連のステップを経て、製品や部品を効率的かつ精密に作成するプロセスです。
こちらでは、NC工作機械(加工機)、NCデータ、NC装置(制御機)に関する情報も含めたCADCAM加工の流れを説明します。
①設計(CAD)
- コンセプトの作成:製品や部品のアイデアを考え、基本的な形状や機能を決定します。
- 3Dモデリング:CADソフトウェアを使用して、製品の3Dモデルを作成します。この段階で、寸法、形状、耐久性などの詳細が決定されます。
- 設計の検証:設計したモデルを検証して、製造上の問題や機能上の欠陥がないことを確認します。必要に応じて、設計を修正します。
②製造準備(CAM)
- ツールパスの生成:CAMソフトウェアを使用して、CADモデルからNC工作機械が製品を加工するためのツールパス(工具の動きの軌跡)を生成します。
- NCデータの作成:ツールパス情報を基に、NC工作機械を制御するためのNCデータ(Gコードなど)を作成します。
③加工(NC工作機械とNC装置)
- NC工作機械の設定:加工に使用するNC工作機械を準備し、必要な工具をセットアップします。
- NCデータの読み込み:作成したNCデータをNC装置(制御機)に読み込ませます。NC装置は、NCデータに基づいて工作機械の動きを制御します。
- 加工の実行:NC装置の制御により、NC工作機械がツールパスに従って製品を加工します。この過程で、切削、穴あけ、形状加工などが行われます。
④仕上げと検査
- 仕上げ加工:必要に応じて、研磨や塗装などの仕上げ加工を行います。
- 品質検査:加工された製品の寸法や品質を検査し、設計仕様に合致しているかを確認します。
⑤完成品
- 組み立て:複数の部品がある場合、組み立てを行います。
- 最終検査:完成した製品の最終検査を行い、品質を確認します。
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CAD/CAMソフトウェア8選
CAMCORE EX
「CAMCORE EX」は、マーブル社よりリリースされている2.5次元CAMです。3次元CADからの大容量データ(図面データ容量無制限)に対応して、スムーズに取り込むことが出来ます。
図面と加工データを同一ファイル上で管理しているため、加工データの作成後に必要な項目のみを変更するだけで、新たなNCデータを作成することが可能です。
Autodesk Fusion(Fusion360)
「Autodesk Fusion(Fusion360)」は、オートデスク社よりリリースされている クラウド型CAD/CAM/CAEです。 設計、開発、解析シミュレーション、製造をすべてまとめて管理できる統合プラットフォームです。
社内外のチームと共同作業が可能で、さまざまなチームが加える設計変更、コメント、マークアップがすべて一元化され、プロジェクトの進行状況が簡単に把握できます。
VISI
「VISI」は、Hexagon社よりリリースされているCAMソフトウェアです。
豊富なモジュールを持つ金型設計製造3次元CAD/CAMで、ワイヤフレーム・サーフェスモデル・ソリッドモデルを統合化したモデリング環境と、高演算アルゴリズムを使用した2軸・3軸加工から同時5軸加工まで、豊富な加工機能を備えています。
Mastercam(マスターキャム)
「Mastercam」は、米国Mastercam社よりリリースされているCAD/CAMソフトウェアです。汎用性が高く、2次元CADデータからツールパスを作成するなど2/3次元を混在したツールパス作成が可能です。
また「Mill」「Mill 3D」「Multi-Axis」「Lathe」「Mill-Turn」などのモジュールを組み合わせることで、金型・旋削・部品加工などあらゆる加工に対応します。
hyperMILL(ハイパーミル)
「hyperMILL」は、OPEN MIND社よりリリースされているCAD/CAMソフトウェアです。
革新的な5軸加工はもちろん2.5次元、3次元加工に対応したモジュール方式で柔軟に優れます。シンプルで使いやすいプログラミング、信頼性の高い干渉検知、干渉回避機能により、効率的で信頼性の高いプログラミングを実現します。複合加工や HSC(高速切削加工)、HPC(ハイパフォーマンス加工)といった機械加工にも対応します。
SheetPartner(シートパートナー)
「SheetPartner」 は、株式会社テイクソフトよりリリースされているCAD/CAMソフトウェアです。
平面切断加工機(レーザー・プラズマ・ガス溶断・ウォータージェット等)に対応するCAMモジュールや、タレパン、ネスティング、板金展開、ダクト展開等多様なオプションモジュールから構成される、ハイパフォーマンス板金系CAD/CAMシステムです。
FFCAM(エフエフキャム)
「FFCAM」は、牧野フライス製作所よりリリースされているCAMソフトウェアです。
工作機械の専門メーカーの技術ノウハウを基に開発され、多機能・高性能ながらシンプルな操作感が魅力です。短時間で高品質なNCプログラムを作成することが可能です。
CAMTOOL(キャムツール)
CAMTOOLは、株式会社C&GシステムズよりリリースされているCAD/CAMソフトウェアです。
金型作成に特化した独創的なモデラーを持っており 、穴加工、2軸加工、3軸、固定5軸、同時5軸をラインナップされています。 特定のツーリング形状での干渉を避ける加工や、未加工領域の自動認識、スムーズなベクトル変化のためのスムージング機能が特徴で、主要メーカーの工具カタログが標準で搭載されています。
CAD/CAMの導入フローについて
図面作成から加工、製品完成までの流れは以下の通りです。
CAD/CAM加工軸について
製造する部品の形状、精度、加工時間などにより、最適な加工方法が異なります。CAD/CAMソフトウェアは、これらの複数の軸をサポートし、効率的かつ精度高く部品を製造するためのツールパスを生成できます。CAMソフトごとに得意な分野が異なるので、自社のニーズに合わせて最適なものを選択しましょう。
主要な部品加工の方法とその特徴についてまとめてみました。
2軸加工(2D加工)
X軸とY軸の2方向の動きによって、平面的な加工を行います。主に平面のポケット加工や輪郭加工、穴あけなどを行います。
▶例:CAMCORE EX、Fusion、VISI、Mastercam、hyperMILL
2.5軸加工
2軸加工の拡張で、Z軸方向の移動を追加して部分的な立体加工を行います。 平面輪郭に高さの情報を追加する方法で、立体的な形状を部分的に加工することができます。
3軸加工
X軸、Y軸、Z軸の3方向の同時移動が可能で、自由曲面を含む立体的な加工を行います。
▶ 例:Fusion、VISI、Mastercam、hyperMILL
割出加工
回転軸を特定の角度に固定してから加工を行います。先に2軸(回転・傾斜)でワークの位置を決めてから、その後3軸(X/Y/Z)で加工するため、特定の角度や方向からの加工が容易になり、複雑な形状も加工できます。
▶ 例:Fusion、VISI、Mastercam、hyperMILL
4〜5軸加工
3軸加工に、ワークや工具の回転を与え加工を行います。複雑な形状や斜めの面も効率が良く加工できるという強みがあります。
- 4軸:3軸のXYZ軸移動に、1つの回転軸を追加
- 5軸:3軸のXYZ軸移動に、2つの回転軸を追加
▶ 例:Fusion360、VISI、Mastercam、hyperMILL
5面加工
基本の5面方向(XY, XZ, YZ, ZX, ZY)で加工を行います。 アタッチメントの交換で、5方向以上の加工も可能です。
板金レーザー加工
高いエネルギーを持つレーザー光を使って、板金を切断や穴あけなどの加工を行います。レーザーの照射ポイントは非常に細いため、高精度なカットが可能です。また加工スピードも速く複雑な形状も容易にカットできるため、多様な板金製品の製造に用いられます。
金型加工
大量生産時の、原型となる「型」を製造する加工方法です。金型は、プラスチック射出成形やダイキャスト、プレス加工などの生産工程で使用されます。金型の設計・製造は非常に精密であり、製品の品質や生産効率に大きな影響を与えるため、高い技術と経験が求められます。
例:FFCAM(※FFCAMは牧野フライス製作所専用のCAMになります) CAMTOOL、VISI
NCデータとは
NCとは「Numerical Control」の略で、数値による制御 を指します。工作機械やマシニングセンターを制御し、特定の加工動作を指示するコードやデータの集合体が「NCデータ」です。 近年主流となっている「CNC」は、コンピュータによる 数値制御機能を備えたものを指します。
指示内容
NCデータの内容には、座標位置や加工動作などの指示だけではなく、工具の種類、速度、回転方向など多岐にわたる制御コードが含まれています。以下が主な指示内容の例になります。
- 座標指示:X、Y、Zなどの座標でツールの正確な移動位置を指示。
- 加工命令:ドリルでの穴開けやフライスでの材料削りなどの具体的な動作指示。
- ツール情報:使用する工具の種類、サイズ、回転速度、進行速度など。
- その他の指示:冷却液の使用やスピンドルの回転方向、加工速度の調整などの加工条件や機械設定に関する情報。
NC装置(制御機)
NC装置とは、「Numerical Control(数値制御)」を用い、工作機械をプログラムで制御するための装置です。
NC装置によって工具の動きや加工条件を数値化したデータ(NCデータ)を読み取り、工具や作業台を正確に動かす指令を出します。これにより、手動では難しい精密で複雑な加工が自動化されます。
加工速度や切削パスなどの動作条件を細かく設定できるため、多品種少量生産から大量生産まで幅広く対応可能です。
代表的なNC装置にはこのような種類があります。
- FANUC(ファナック)
- OSP
- MAZATROL(マザトロール)
- メルダス
NC工作機械(加工機)
NC工作機械とは、「Numerical Control(数値制御)」を用いて動作する工作機械のことです。
コンピュータで生成されたプログラム(NCデータやGコード)を元に工具や作業台を制御し、自動で加工を行います。NC工作機械を使用することで、精密な加工が可能になり、手動作業に比べて大幅な効率向上が期待できます。主に、金属部品や樹脂製品の切削・成形加工で活躍しており、形状の複雑さや大量生産のニーズに対応します。
主要なNC工作機械(加工機)にはこのような種類があります。
- NCフライス
- マシニングセンタ
- 五面加工機
- NCルーター加工機
- 旋盤
- ワイヤ放電加工機
- レーザー加工機
CAD/CAMの導入ならABKSSにご相談ください
CADCAMの導入には、設計、製造プロセス、材料の特性などに関する技術的な知識が求められます。CADCAMを効果的に活用していくためには、まず経験豊富な専門家に相談してみることをおすすめします。
ABKSSは、40年以上製造業の業務改善をサポートしてきた実績があります。お客様の課題をていねいにヒアリングし、豊富な選択肢の中からベストな解決案をご提案させていただきますので、どうぞ安心してご相談ください。
おわりに
本記事では、CAMの概要から各種CAD/CAMソフトウェア、NC工作機械、さまざまな加工軸の説明まで、幅広く触れてきました。
CADCAM加工は、設計から製造までの一連のプロセスがデジタル化されることで、効率的かつ迅速な製品開発が可能になるだけでなく、高い精度と一貫した品質保持を実現します。特に製造業で問題となることの多い「人材不足」「属人化」にも、大きく貢献することでしょう。