BIMとは - メリットやCADとの違い、代表的ソフトをわかりやすく解説
建築業界で急速に普及しているBIMについてご存知でしょうか?BIMの導入により、設計エラーの削減やプロジェクト管理の効率化が図れるため、建築業界において注目されています。
本記事では、BIMの基本概念、メリット、CADとの違い、代表的なソフトウェアについてわかりやすく解説します。
このような方におすすめの記事です
- BIMの基本的な概念を理解したい方
- BIM導入によるメリット/デメリットを知りたい方
- BIMを実際にどう運用すべきか知りたい方
目次[非表示]
BIMとは
BIMとは、Building Information Modeling - ビルディング・インフォメーション・モデリングの略で、建築物の設計、施工、運用を3Dデジタルモデルで一元管理する技術です。
プロジェクト全体の情報を統合し、関係者間で共有することで、設計精度の向上、コスト削減、工期短縮を実現します。また、建物のライフサイクル全体にわたり、持続可能性と効率性を高め、建築プロジェクトの成功にも寄与します。
BIMの歴史とその発展
BIMの歴史は、1970年代のコンピューター支援設計(CAD)の進化から始まりました。1980年代にBIMの概念が登場し、3Dモデリングを用いた建築設計が注目されました。
1990年代にはソフトウェアの進化で設計、施工、管理のプロセスが統合され、2000年代以降はクラウド技術の発展により、BIMは建物のライフサイクル全体を通じた情報管理ツールとして普及しました。現在では、BIMは建築業界での効率化や品質向上を支える重要な技術となっています。
国土交通省は2020年から「建築BIM加速化事業」を推進しています。この事業では、BIM導入支援や標準化を進めています。建築業界のデジタル化と生産性向上を目指し、2025年までに公共建築物でのBIM活用を義務化する方針です。
BIMとCADとの違い
BIMとCADの違いは、設計プロセスと情報管理にあります。CADは2D設計図の作成から始まり、その後に3Dモデルを作成しますが、BIMは最初から3Dモデルを作成し、それを基に2D図面を生成します。
また、BIMは資材の発注書や見積書なども生成でき、プロジェクト全体の情報を一元管理します。これにより、依頼主とのイメージのずれを減らし、迅速な修正が可能で、建物の「ライフサイクル」全体を通じて効率化を実現します。
BIMの機能
BIMの主な機能としては、「3Dモデリング」「情報管理」「ライフサイクル管理」「持続可能な建築設計」などがあります。
●3Dモデリング
BIMは、建物の立体モデルをデジタルで作成し、設計の精度を向上させます。これにより、構造の問題や設計エラーを早期に発見でき、シミュレーションを通じてより正確な設計が可能です。
●情報管理
BIMはプロジェクトのすべての情報を一元管理し、関係者間でリアルタイムにデータを共有可能です。データの重複や矛盾が防止され、プロジェクトの効率と透明性が向上します。
●ライフサイクル管理
BIMのライフサイクル管理機能は、設計から施工、運用、維持管理まで一貫した情報を管理できます。設備の交換時期を予測しやすくなり、建物の長寿命化とコスト削減を実現可能です。
●持続可能な建築設計
BIMは持続可能な建築設計を支援し、エネルギー効率や資源利用のシミュレーションを可能にします。環境負荷の低い設計を行うことで、持続可能な建築物が実現可能です。
代表的なBIMソフト4選
こちらでは、国内外で人気のある代表的な4つのBIMソフトを紹介し、それぞれの特徴や強みについて詳しく解説します。多彩な選択肢がありますので、それぞれのソフトが持つ独自の特徴を理解し、プロジェクトに最適なツールを選びましょう。
Archicad
Archicadは、Graphisoft社が提供する代表的なBIMソフトウェアです。高度な3Dモデリング機能と情報管理機能を兼ね備えているため、建築設計プロセスを大幅に効率化できます。
リアルタイムでのビジュアライゼーションや仮想クライアントプレゼンテーションが可能で、設計者とクライアントのコミュニケーションが円滑化に大きく貢献することでしょう。
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Revit
Revitは、BIMに特化した高度な設計ソフトウェアです。Revitは、建築設計、構造設計、MEP(機械、電気、配管)エンジニアリングのために特別に開発されたツールであり、これらの分野を統合した設計を可能にします。
構造体や配管などの設計要素を詳細にシミュレーションできるだけなく、設計の変更がリアルタイムで反映されるため、設計ミスを減少させることが可能です。
GLOOBE
GLOOBEは、福井コンピュータアーキテクト社が提供する日本発のBIMソフトウェアです。
日本の設計手法や建築基準法に対応した建材データや自由度の高いデザイン機能、基本設計を元にした実施設計、建築基準法に沿った法規チェック等、日本の設計に最適化された機能が特長です。
VectorWorks
VectorWorksは、VectorWorks社が提供するBIMソフトウェアです。建築・インテリア業界で採用されることが多く、直感的で分かりやすいインターフェイスと、作図しやすい環境が特長です。
基本パレットには作図ツール、ツールセットには作図補助やモデリングツールが格納されているため、ツール群へのアクセスが非常にスムーズです。
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BIMのメリット
BIMの導入には、多くのメリットがあります。こちらでは、BIMの導入による具体的なメリットについて詳しく解説します。
①設計とプロジェクト管理の効率化
BIMを利用することで、設計初期からのシミュレーションが可能になり、設計エラーを削減できます。例えば、3Dモデルを使用して構造の問題やエネルギー効率を評価し、手戻りを防ぎます。また、作業時間の把握が容易になり、リアルタイムでのモデル更新が進捗の見える化を実現し、リソースの最適配分と予算管理が効率化されます。
②コスト削減と作業の自動化
BIMは作業の自動化と迅速な修正を可能にし、コスト削減に大きく寄与します。資材発注ミスの減少や無駄な作業の防止により、納期と予算の管理が改善され、プロジェクト全体のコスト効率が向上します。
③設計の可視化とコミュニケーションの改善
BIMの3Dモデリングにより、建物の内部構造や配管が視覚的に示され、専門知識がなくても関係者全員が理解しやすくなります。これにより、設計意図の把握が容易になり、コミュニケーションエラーを減少させ、プロジェクトの成功率を高めます。
④柔軟な働き方と多用途活用の支援
BIMはクラウドベースで情報を共有できるため、リモートからのアクセスが可能で、テレワークを支援します。これにより、通勤時間やオフィス運営コストの削減が実現し、柔軟な働き方が促進されます。さらに、完成したBIMモデルは、リニューアル、PR、修繕計画など多用途に活用でき、効率的な設計と運用に貢献します。
BIMのデメリット
BIMは多くの利点を提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切な計画を立てるようにしましょう。
①導入初期のコストと人材教育の必要性
BIMの導入には、初期コストと人材教育が必要です。BIMソフトウェアは高価なライセンス費用がかかり、使用には専門的なトレーニングが不可欠です。初期投資は避けられませんが、長期的には設計エラーの削減やプロジェクト管理の効率化によるコスト削減が期待できます。
②情報一元化のセキュリティリスク
情報一元化は管理効率を向上させますが、セキュリティリスクも伴う可能性があります。すべての情報が集中するため、セキュリティ侵害が発生すると、影響が広範囲にわたる可能性があります 。不正アクセスやハッキングに備え、アクセス制御やデータ暗号化などの対策が必要です。
③既存施設への適用の難しさ
既存の施設にBIMを導入するのは難しい場合があります。特に古い建物では、手書き図面しかなく、必要なデジタルデータが不足しています。この場合、3Dスキャニング技術などで現状を把握する必要があります。適切なデータ収集で、既存施設でもBIMの利点を活用できます。
BIMの導入と運用について
こちらでは、BIMの導入ステップからソフトの選定、実際の作業の流れ、成功事例までを詳しく解説します。
BIM導入における4ステップ
BIMの導入には、段階的なアプローチが必要です。このように、段階的にBIMを導入することで、問題を早期に発見・修正し、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
①計画と準備
BIM導入の目標と範囲を設定し、必要なソフトウェアやハードウェアを選定します。初期準備として、組織のニーズに合わせたBIM戦略を策定し、導入の準備を整えます。
②パイロットプロジェクトの実施
小規模なプロジェクトでBIMを試験運用し、システムの基本操作やツールの使い方を習得します。このプロセスで、運用上の問題点や改善点を明確にし、BIMの効果を検証します。
③トレーニングと評価
全ての関係者に対して、BIMの操作方法や利便性についてのトレーニングを実施します。パイロットプロジェクトの成果を評価し、そのフィードバックを基に教育内容を改善し、チーム全体のスキル向上を図ります。
④本格運用と継続的な改善
パイロットプロジェクトで得た知見を活かし、BIMの本格運用を開始します。大規模プロジェクトにもBIMを適用し、情報の一元化と管理効率化を実現します。その後も定期的にシステムの見直しやアップデートを行い、継続的な改善を図ります。
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BIMでの作業の流れ
BIMによる作業の流れは、プロジェクトの設計から建設、運用までを統合的に管理するプロセスです。最初に設計段階で詳細な3Dモデルを作成し、このモデルには建築部材や設備の情報が含まれています。次に、モデルを基に構造耐久性やエネルギー消費などのシミュレーションを行い、設計が最適化されます。
建設段階では、このモデルを使用して施工主や施工者と情報を共有し、手戻りやエラーを防ぎます。運用段階では、BIMモデルが修繕やリニューアル計画に活用され、建物のライフサイクル管理が効率的に行えます。
BIM活用事例(施工図制作会社)
株式会社基設計様では、代表的なBIMツール「Archicad」と、そのクラウドプラットフォームである「BIMcloud」を活用し、設計から施工までの一貫した管理を可能にしています。
3Dモデルを通じて建物の全体像を把握しながら、各構造や設備の詳細なシミュレーションを実施し、設計段階で潜在的な問題を早期に発見することで、手戻りを大幅に削減しました。
▶ 株式会社基設計 様「Archicad & BIMcloud」の事例 → 詳細はこちら
BIMに関する誤解
BIMは、建築業界において多くの利点を提供する技術ですが、その一方でいくつかの誤解も存在します。こちらでは、多く見られる誤解について解説します。
BIMは高すぎる?
BIMは初期費用が高いように見えますが、長期的にはコストを回収できます。導入にかかる費用は高額ですが、運用で得られるコスト削減や効率化による時間短縮を考慮すると、総コストは低くなることもあります。
BIMは設計ミスを減らし、再設計によるコストやスケジュール遅延を防ぐほか、スムーズなプロジェクト管理を実現し、全体のコスト削減に貢献します。長期的な視点で見ると、BIMは経済的な選択といえるでしょう。
BIMは小規模プロジェクトには向かない?
また、一部ではBIMが大規模プロジェクトにのみ適していると誤解されることもあります。
しかし実際には、BIMは小規模プロジェクトにも有効です。設計の効率化やデータの一元管理に大きな利点をもたらし、3Dモデリングや詳細なデータ管理機能は、プロジェクト規模に関わらず有用です。小規模な住宅リノベーションや個人住宅プロジェクトなどの小規模プロジェクトにもおすすめできます。
BIMの将来性
日本でのBIMの普及は進んでいるものの、他国と比べるとまだ低水準です。初期コストの高さや人材教育の負担、既存のCADからの移行が主な障害となっており、特に中小企業にとって大きな負担となっていると考えられます。
しかし、BIM技術は進化を続け、建築業界では効率的なプロジェクト管理とコスト削減が期待されています。AIやクラウド技術の統合により、リアルタイムでのデータ共有やシミュレーションが実現すれば、設計から施工、維持管理のプロセスはさらに効率化されることでしょう。
今後は、政府や業界団体の支援、教育プログラムの充実、互換性のあるソフトの拡充などにより、BIMの普及がさらに進むと予想されます。
ARES(アレス)は、DWG互換のCADソフトウェアで、AutoCADやJw_CADなどの他のCADソフトとの互換性を持っています。DWG形式に加えて、JWWやSXFなど多様なファイル形式にも対応しており、製図に便利なツールを多数備えています。
おわりに
BIMは、建築の設計、施工、管理を効率化する3Dモデリング技術で、情報の一元化やシミュレーションなどを実現可能です。これにより、設計ミスの削減や業務効率の向上、コスト削減が期待できるだけでなく、プロジェクトのライフサイクル全体を管理することも可能です。
しかし、BIMの導入には初期コストや専門知識の習得が必要で、セキュリティの問題や適用が難しい場合もあります。
そのため、導入を検討する際には、システムの選定や運用方法についての高度な知識が求められ、専門家のアドバイスが重要です。専門家のサポートを受けることで、導入初期の課題を乗り越え、プロジェクトの効率化やコスト削減といったBIMのメリットを最大限に活用できるでしょう。
自社のニーズに合ったソフトウェア選定と導入サポート、およびBIM要員の教育講習などは、ぜひABKSSにご相談ください。
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