BIMとは?CADやCIMとの違い、導入メリット、代表的ソフトまで分かりやすく解説
建築業界で急速に普及しているBIMについてご存知でしょうか?BIMの導入により、設計エラーの削減やプロジェクト管理の効率化が図れるため、建築業界において注目されています。
本記事では、BIMの基本概念、メリット、CADとの違い、代表的なソフトウェアについてわかりやすく解説します。
このような方におすすめの記事です
- BIMの基本的な概念を理解したい方
- BIM導入によるメリット/デメリットを知りたい方
- BIMを実際にどう運用すべきか知りたい方
目次[非表示]
BIMとは
BIM(Building Information Modeling)とは、建物の設計、施工、維持管理において利用される3Dモデルを基にしたソフトウェア技術です。BIMを活用することで、コンピューター上に建物の詳細な3Dモデルを構築し、設計プロセスを効率的に進めることができます。
この3Dモデルにより、設計段階で建物の干渉チェックや日照の確認などが行え、施工段階での問題を事前に発見できるため、生産性が向上します。
さらに、BIMは設計図面だけでなく、必要な部材、コスト、工期などの情報も統合管理でき、プロジェクト関係者間の合意形成を円滑に進めるために役立ちます。
また、BIMモデルにおいては、設計変更が発生した際に関連情報が自動で更新され、修正漏れや計算ミスを防ぎ、プロジェクト全体の効率を大幅に向上させます。
国土交通省は2020年から「建築BIM加速化事業」を推進しています。この事業では、BIM導入支援や標準化を進めています。建築業界のデジタル化と生産性向上を目指し、2025年までに公共建築物でのBIM活用を義務化する方針です。
3D CADとBIMの違い
3D CAD(3Dコンピュータ支援設計)は、コンピュータを用いて3次元のオブジェクトやモデルを設計するためのソフトウェアです。建物の3Dモデルを作成するという点ではBIMと共通していますが、それぞれに異なる特徴があります。
BIMと3D CADの大きな違いは、建築部材、コスト、スケジュールなど、建物に関連する情報を統合して管理できるかどうかにあります。3D CADは、形状や寸法の表現には優れているものの、BIMのように設計情報を一括管理することはできません。
また、3D CADを含む一般的なCADソフトウェアは、線や面を組み合わせてモデルを作成し、単純な“線”や“面”として扱います。しかし、BIMはその線や面を柱や梁といった建築要素として扱い、それぞれに属性情報を付与することが可能です。BIMでは、各部材に条件を設定したり、オブジェクトの役割を細かく管理できる点が特徴です。
3D CADとBIMはいずれも設計図作成に用いられますが、BIMはさらに施工、メンテナンス、資材管理にまで活用範囲が広がり、部材の価格情報を組み込んでコスト見積もりや予算管理にも役立ちます。
CIMとBIMの違い
CIMは、橋やダムなどの土木構造物に特化した情報モデリングをサポートするソフトウェアを指します。これは、建築情報モデリング(BIM)と同様に設計や施工、さらに維持管理までを支援する目的で使われています。実際、CIMはBIMの概念をベースに考案されたものです。
ただし、BIMとCIMの違いとして、適用される対象分野に注目する必要があります。BIMが主に建築物に使われるのに対し、CIMは道路やダムなどのインフラ施設を対象としています。建築物を対象とするBIMは、建物の構造や設備に関する情報が中心ですが、CIMで扱う土木構造物では、周辺地形や地質、自然環境といった地理的情報も重要になります。
そのため、モデリングされる情報の種類も異なってきます。なお、海外ではBIMとCIMの区別があまりなく、どちらも「BIM」と総称される場合があります。
BIMの機能
BIMは、建物のデジタル情報を活用し、設計・施工・維持管理のあらゆるプロセスを支援する革新的なシステムです。その主な機能として、「3Dモデリング」「情報管理」「ライフサイクル管理」「持続可能な建築設計」などがあり、それぞれがプロジェクトの精度向上と効率化に貢献しています。
①3Dモデリング
BIMを活用することで、建物の立体モデルをデジタルで精密に作成し、設計の完成度が向上します。
3Dモデリングにより、建物の構造や配置の問題を早期に発見でき、構造体や空間の配置、設計エラーを視覚的に確認することが可能です。現実に即したモデルを構築でき、工事中の手戻りを減らすことができます。
②情報管理
BIMはプロジェクトの全情報を一元管理し、設計者や施工管理者、クライアントなどの関係者間でリアルタイムに情報を共有します。
これによりデータの重複や矛盾が防止され、迅速で正確な意思決定が可能です。特に大規模なプロジェクトでは、情報の透明性と効率性が向上し、作業のスムーズな進行を支援します。
③ライフサイクル管理
BIMには、設計から施工、運用、そして維持管理までを一貫して管理するライフサイクル管理機能があります。設備やインフラの交換時期を予測しやすくなり、建物の寿命が延びるだけでなく、長期的な維持コストも削減可能です。
この機能は、施設の計画や将来のメンテナンススケジュールを考慮する上でも重要です。
④持続可能な建築設計
BIMはエネルギー効率や資源利用のシミュレーションを可能にし、環境に優しい建築設計を支援します。建物の消費エネルギーやCO₂排出量を予測し、設計段階で環境負荷を低減する施策を組み込むことができます。
そのため、持続可能な社会への貢献と、長期的な建物の価値向上を図ることが可能です。
BIM活用のメリット
メリット1:設計とプロジェクト管理の効率化
BIMを利用することで、設計初期からのシミュレーションが可能になり、設計エラーを削減できます。例えば、3Dモデルを使用して構造の問題やエネルギー効率を評価し、手戻りを防ぎます。
また、作業時間の把握が容易になり、リアルタイムでのモデル更新が進捗の見える化を実現し、リソースの最適配分と予算管理が効率化されます。
メリット2:コスト削減と作業の自動化
BIMは作業の自動化と迅速な修正を可能にし、コスト削減に大きく寄与します。資材発注ミスの減少や無駄な作業の防止により、納期と予算の管理が改善され、プロジェクト全体のコスト効率が向上します。
メリット3:設計の可視化とコミュニケーションの改善
BIMの3Dモデリングにより、建物の内部構造や配管が視覚的に示され、専門知識がなくても関係者全員が理解しやすくなります。これにより、設計意図の把握が容易になり、コミュニケーションエラーを減少させ、プロジェクトの成功率を高めます。
メリット4:柔軟な働き方と多用途活用の支援
BIMはクラウドベースで情報を共有できるため、リモートからのアクセスが可能で、テレワークを支援します。これにより、通勤時間やオフィス運営コストの削減が実現し、柔軟な働き方が促進されます。
さらに、完成したBIMモデルは、リニューアル、PR、修繕計画など多用途に活用でき、効率的な設計と運用に貢献します。
BIMのデメリット(注意点)
BIMは多くの利点を提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切な計画を立てるようにしましょう。
デメリット1:導入初期のコストと人材教育の必要性
BIMの導入には、初期コストと人材教育が必要です。BIMソフトウェアは高価なライセンス費用がかかり、使用には専門的なトレーニングが不可欠です。
初期投資は避けられませんが、長期的には設計エラーの削減やプロジェクト管理の効率化によるコスト削減が期待できます。
デメリット2:情報一元化のセキュリティリスク
情報一元化は管理効率を向上させますが、セキュリティリスクも伴う可能性があります。すべての情報が集中するため、セキュリティ侵害が発生すると、影響が広範囲にわたる可能性があります
不正アクセスやハッキングに備え、アクセス制御やデータ暗号化などの対策が必要です。
デメリット3:既存施設への適用の難しさ
既存の施設にBIMを導入するのは難しい場合があります。特に古い建物では、手書き図面しかなく、必要なデジタルデータが不足しています。
この場合、3Dスキャニング技術などで現状を把握する必要があります。適切なデータ収集で、既存施設でもBIMの利点を活用できます。
BIM導入における4ステップ
BIMの導入には、段階的なアプローチが必要です。このように、段階的にBIMを導入することで、問題を早期に発見・修正し、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
①計画と準備
BIM導入の目標と範囲を設定し、必要なソフトウェアやハードウェアを選定します。初期準備として、組織のニーズに合わせたBIM戦略を策定し、導入の準備を整えます。
②パイロットプロジェクトの実施
小規模なプロジェクトでBIMを試験運用し、システムの基本操作やツールの使い方を習得します。このプロセスで、運用上の問題点や改善点を明確にし、BIMの効果を検証します。
③トレーニングと評価
全ての関係者に対して、BIMの操作方法や利便性についてのトレーニングを実施します。パイロットプロジェクトの成果を評価し、そのフィードバックを基に教育内容を改善し、チーム全体のスキル向上を図ります。
④本格運用と継続的な改善
パイロットプロジェクトで得た知見を活かし、BIMの本格運用を開始します。大規模プロジェクトにもBIMを適用し、情報の一元化と管理効率化を実現します。その後も定期的にシステムの見直しやアップデートを行い、継続的な改善を図ります。
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BIM活用事例(施工図制作会社)
株式会社基設計様では、代表的なBIMツール「Archicad」と、そのクラウドプラットフォームである「BIMcloud」を活用し、設計から施工までの一貫した管理を可能にしています。
3Dモデルを通じて建物の全体像を把握しながら、各構造や設備の詳細なシミュレーションを実施し、設計段階で潜在的な問題を早期に発見することで、手戻りを大幅に削減しました。
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BIMに関する誤解
BIMは、建築業界において多くの利点を提供する技術ですが、その一方でいくつかの誤解も存在します。こちらでは、多く見られる誤解について解説します。
BIMは高すぎる?
BIMは初期費用が高いように見えますが、長期的にはコストを回収できます。導入にかかる費用は高額ですが、運用で得られるコスト削減や効率化による時間短縮を考慮すると、総コストは低くなることもあります。
BIMは設計ミスを減らし、再設計によるコストやスケジュール遅延を防ぐほか、スムーズなプロジェクト管理を実現し、全体のコスト削減に貢献します。長期的な視点で見ると、BIMは経済的な選択といえるでしょう。
BIMは小規模プロジェクトには向かない?
また、一部ではBIMが大規模プロジェクトにのみ適していると誤解されることもあります。
しかし実際には、BIMは小規模プロジェクトにも有効です。設計の効率化やデータの一元管理に大きな利点をもたらし、3Dモデリングや詳細なデータ管理機能は、プロジェクト規模に関わらず有用です。小規模な住宅リノベーションや個人住宅プロジェクトなどの小規模プロジェクトにもおすすめできます。
代表的なBIMソフト4選
さいごに、国内外で人気のある代表的な4つのBIMソフトを紹介し、それぞれの特徴や強みについて詳しく解説します。多彩な選択肢がありますので、それぞれのソフトが持つ独自の特徴を理解し、プロジェクトに最適なツールを選びましょう。
Archicad
Archicadは、Graphisoft社が提供する代表的なBIMソフトウェアです。高度な3Dモデリング機能と情報管理機能を兼ね備えているため、建築設計プロセスを大幅に効率化できます。
リアルタイムでのビジュアライゼーションや仮想クライアントプレゼンテーションが可能で、設計者とクライアントのコミュニケーションが円滑化に大きく貢献することでしょう。
Revit
Revitは、BIMに特化した高度な設計ソフトウェアです。Revitは、建築設計、構造設計、MEP(機械、電気、配管)エンジニアリングのために特別に開発されたツールであり、これらの分野を統合した設計を可能にします。
構造体や配管などの設計要素を詳細にシミュレーションできるだけなく、設計の変更がリアルタイムで反映されるため、設計ミスを減少させることが可能です。
GLOOBE
GLOOBEは、福井コンピュータアーキテクト社が提供する日本発のBIMソフトウェアです。
日本の設計手法や建築基準法に対応した建材データや自由度の高いデザイン機能、基本設計を元にした実施設計、建築基準法に沿った法規チェック等、日本の設計に最適化された機能が特長です。
VectorWorks
VectorWorksは、VectorWorks社が提供するBIMソフトウェアです。
建築・インテリア業界で採用されることが多く、直感的で分かりやすいインターフェイスと、作図しやすい環境が特長です。 基本パレットには作図ツール、ツールセットには作図補助やモデリングツールが格納されているため、ツール群へのアクセスが非常にスムーズです。
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おわりに
BIMは、建築の設計、施工、管理を効率化する3Dモデリング技術で、情報の一元化やシミュレーションなどを実現可能です。これにより、設計ミスの削減や業務効率の向上、コスト削減が期待できるだけでなく、プロジェクトのライフサイクル全体を管理することも可能です。
しかし、BIMの導入には初期コストや専門知識の習得が必要で、セキュリティの問題や適用が難しい場合もあります。
そのため、導入を検討する際には、システムの選定や運用方法についての高度な知識が求められ、専門家のアドバイスが重要です。専門家のサポートを受けることで、導入初期の課題を乗り越え、プロジェクトの効率化やコスト削減といったBIMのメリットを最大限に活用できるでしょう。
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